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4次元エコウォッチング(安井至) 環境問題のウソと正解(07/10/17)
最近、「環境問題のウソ」を取り扱っている本が売れているようだ。とうとう「その2」も発行されたらしい。この本を読んだ人の何割かは、「環境問題はウソばかり」という著者の指摘に素直に驚き、政府や自治体は何をやっているのだ、という感想をもったようだ。このような人はかなり多いことがアマゾンなどに投稿された本の感想を読むと分かる。さらに、「環境派的優等生」に同調できないタイプの読者から、この著者への感情的な賛同があることが読み取れる。 環境問題には、比較的単純な物理的現象の場合でも、(1)科学的真実と言える、(2)かなり真実に近い推定と思われる、(3)かなり疑わしい、(4)絶対的な間違いといった4ジャンルぐらいに分けないと議論が難しい。その理由は、多様な要素を考慮しなければならないからである。 さらに、政府や自治体による「環境政策の場合」には、(1)ほぼ賛成、(2)まあ許容できる、(3)賛同するのは難しい、(4)改善が必要、といった4分類をするのがせいぜいである。その理由は、一つの軸のみで環境政策を評価し、これは○だ、×だ、と断定すること自体が間違っているからである。複数軸での評価を行うとなると本質的に、重み付けをどのように行うか、という問題に直面し、総合的な判断、言い換えれば、いささか切れ味の悪い解が求められるからである。 すなわち、ある問題に対して、例えば温暖化防止策に対して、「すぐにでもやめるべきだ」という結論を出すことは、ものごとを二分法で見ているゆえに得られる単純な結論にすぎない。
■善悪二元論では片付かない環境問題 一般論だが、「単純な二分法」、言い換えれば、一見切れ味が良く見えるが知的検討が不十分な方法論で書かれた本が売れることが、このところ多いようだ。これは、実に憂うべき状況である。善悪二元論しか理解できない市民層が増えている証拠だからである。 政治の世界もそうだった。「郵政民営化、○か×か」という選挙が「分かりやすい」と評価され、小泉劇場や小泉チルドレンなどの現象が起きた。 テレビというメディアは、情報を十分に伝達する時間的な余裕が無いもので、結論も単純なものにならざるを得ない。それに対し、本来、深遠かつ複雑な議論をすべきメディアである単行本までが、テレビ的なメディアに成り下がっているという可能性が高い。 今回は、環境問題の「ウソ」と「正解」について、そのあたりの事情を考察してみたいと思う。あえて、「真実」という言葉は使わない。「正解」というやや弱い表現に留めておく。 その本だが、実のところ、意図的に買っていない。そのため、何が書かれているか詳細は把握していない。なぜ買わないのか。「買う価値が無い本は買わない」、というのが一義的な理由。加えて、もともと単純な二元論に基づくご本人の主張は、以前の著書とホームページから推察することが可能だからだ。
■「温暖化で海面が上昇する」の7つのウソと正解
(1)「温暖化によって北極の氷が溶けて海面が上昇する」 温暖化で北極海の氷が融解することは、まぎれもない事実である。そのため海面が上昇するといった主張が一部メディアにあったようだが、これが間違いであることは科学的な真実と言える。すなわち、温暖化で北極海の氷が溶けることは確実であるが、海に浮かんでいる氷が溶けたからといって海面が上昇することはない。そこで、この表現の評価は、「絶対的間違い」。いまさら、ウソだというまでもない単なる無知に過ぎない。 (2)「温暖化によって南極の氷が溶けて海面が上昇する」 この問題は、北が南に変わっただけなのに、いきなり難しくなる。温暖化によって、南極の棚氷が溶けたのは事実である。2002年に「ラーセンB」と呼ばれる埼玉県にも匹敵する面積の棚氷が崩壊した。「これで海面は上昇したのか」と言われるとNoである。この棚氷は海に浮かんでいたものなので、北極海の氷と同様に、海面上昇にはつながらない。しかし、この棚氷が失われたことによって、南極大陸に暖かい風が入り込む可能性が増えるだろう。となると、大陸の氷の融解が誘発される可能性があり、となると、間接的ではあるが、海面上昇につながることも否定できない。 しかし、南極大陸の中心部分の気温は依然として零下である。そのため、地球温暖化が進行して海水からの水の蒸発が増えれば、南極大陸への降雪が増えて結果的に氷が増える可能性がある。 しかし、南極大陸周辺の海水温度が高くなるかどうか、それは分からない。地球温暖化によって上昇する気温は場所の影響が大きい。北半球の温度が上昇すると、逆に南半球の温度が低下するという可能性も無いとは言えない。 結局、温暖化によって南極の氷が溶けることは、「一部正解」。しかし氷の総量は、このところは減少傾向のようだが、増える可能性もある。海面が上昇するかどうかは、したがって、「よく分からない」。
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