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日経エコロミー

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別府Gメンのユコロミー温泉学(斉藤雅樹)

エコと好感度の一石二鳥!竹でできた“ある装置”とは(08/12/18)

斉藤雅樹(さいとう・まさき) 1966年徳島県生まれ。東大工学部卒、現在の独立行政法人、科学技術振興機構勤務後、97年別府市に移住、大分県産業科学技術センターに転職。2005年から別府八湯温泉保証協会が導入した温泉カルテにユーザー評価する温泉Gメンリーダー

 寒くなると温泉にゆったりと浸かり心身をリラックスしたくなる。別府温泉で利用者の目線に立ち泉質をチェックする温泉Gメンのリーダー、斉藤雅樹さんは大分県産業科学技術センターの研究員として日々温泉とエコのあり方を研究している。日経エコロミーでは湯煙を通して見えた温泉と環境と経済の意外な関係を「ユコロミー」と題し、別府Gメン斉藤雅樹さんに連載してもらう。

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     東京から温泉地・別府に移り住んで12年になる。別府は人口12万人の都市で、温泉街と呼ぶには少々大きい。それもそのはず、8つの温泉地が集まる温泉郷で「別府八湯(べっぷはっとう)」と呼ばれる。源泉数は2,914もあり、日本全体の10%以上を占める。「日本の湯 十に一つは 別府の湯」なのだ。

     人口12万の別府に平均して1日1万人ほどの観光客が宿泊している。その合計13万人のために、1日13〜15万トンの温泉が休まずに湧出する。単純計算すれば1人当たり1トン以上あるから、家庭用の風呂桶なら1人5杯の「湯のおかわり」ができることになる。

     そんなに資源に恵まれていて今更「エコ」でもあるまい、と思われそうだが、温泉地ならではの興味深い取り組みがあるので、本欄で順次ご紹介していきたい。

     別府の湯は熱い!源泉の温度が100℃を超える温泉が14ヵ所もある。沸騰状態で湧く源泉を“いい湯加減”の42℃付近まで冷ますことは意外と厄介だ。湯ざましをウッカリ作り忘れた晩に、沸騰したヤカンの湯で赤ちゃんのミルクを作るのは大変でしょう?

     「100℃の湯?それならエネルギー回収すればいいじゃん!」とエコ派なら誰しも思うが、温泉経営者だってそれは百も承知のこと。試行錯誤して色々な装置を試し、業者から見積書も取っている。

     だが、温泉はタダの湯ではないから困る。配管はあっという間に腐食するし、スケール(湯垢)もベットリ付く。メンテナンスを考えれば、熱交換器などの設備投資には覚悟が要る。「ポンプはここじゃ消耗品、毎月交換するよ」という話も聞くほどだ。複雑で高価な機械になればなるほど、すぐ壊れるリスクを考えて二の足を踏むのである。

     恐らく、高価な素材を使って対策を万全に行えば、熱エネルギーは回収できるだろう。実際、それに適した泉質や条件の温泉地もある。しかし、多くの場合は製造時のCO2排出や使用エネルギーは莫大なものになる。コストも考えれば、地熱発電所のような大型プロジェクトでは成り立っても、個々の温泉施設での熱回収は未だ現実的ではないと考えられる。

     では、と開き直って、熱い温泉に水道水を混ぜれば良いか?蛇口から水ジャージャーでは温泉の効能を目当てに来てくれたお客さんの好感度も下がる。水道代も大変だし、エコにも良くない。悩んだ温泉経営者たちが思い至ったのは、竹で作られた「塩田」だった。

     塩田と聞くと、砂浜を区画に分け、海水を散布して水分を蒸発させる「入浜式塩田(いりはましきえんでん)」をイメージする。しかし、昭和20年代に技術革新が起こった。ポンプアップした海水を、屋根状に組んだ竹枝にしたたり落として「雨」を降らせ、水分を蒸発させる「流下式塩田(りゅうかしきえんでん)」がその後20年間ほど、日本中を席巻したのである。

    現存する流下式塩田(兵庫県赤穂市「塩の国」)<br><a href="/column/gmen/article.aspx?id=MMECz8000016122008&page=3">(クリックすると拡大します)</a>

    現存する流下式塩田(兵庫県赤穂市「塩の国」)
    (クリックすると拡大します)

     見てのとおり、無数の水滴にすることで表面積を増やし、蒸発しやすくして海水中の塩分を高めるシンプルな構造である。写真を見た瞬間、温泉経営者と私は「これだ!」と叫んでいた。

     水分が蒸発する際には「気化熱」が大量に奪われる。この塩田装置は、そのまま温泉の冷却装置になり得る!しかも竹製だから腐食やスケール付着にも強い。加えて、かつて数十年、日本各地の海岸で目にしていたノスタルジーをも演出できる。温泉は、無味乾燥な工場やビルの屋上とは違う。プラスチック製や金属製のクーリングタワーにはない、癒しを感じられる空間に最適の温泉冷却装置が実現できる!

    次ページ>>3年間トラブルゼロ、24時間年中無休、メンテナンスいらず……

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