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飯田哲也のエネルギー・フロネシスを求めて

25%削減は可能であり希望だ・新政権における環境エネルギー政策の行方と期待(09/09/17)

飯田哲也(いいだ・てつなり)
 自然エネルギーや原子力などの環境エネルギー政策専門家。温暖化ファンドやグリーン電力のマーケティングなど脱温暖化ビジネスを推進。中央環境審議会、東京都環境審議会などを務める。なお、「フロネシス」は経営学者・野中郁次郎氏によるとアリストテレスが提唱した言葉で、賢慮、倫理、実践的知恵といった意味を持つ。エネルギー政策にはフロネシスを伴うリーダーシップがあってこそ、知の総合力が発揮できる、という思いを込めた

 9月7日、たまたま筆者も呼ばれていた環境シンポジウムの冒頭、新首相となる鳩山由紀夫・民主党代表がスピーチをし、国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のラジェンドラ・パチャウリ議長やイボ・デブア国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長などの国内外ゲストや筆者の目の前で、「2020年までに温暖化ガスを1990年レベルから25%を削減する」ことを表明するとともに、同じ宣言を首相任命後に開催される国連気候変動ハイレベル会合(9月22日)でも表明すると言明した。

 本稿では、「90年比25%削減」や「全量・全種類フィード・イン・タリフ」など新政権が取り組む環境エネルギー政策の課題と方向性を考えてみる。

温暖化ガス25%削減を明言した民主党の鳩山代表=7日午後、東京都内のホテル[共同]

温暖化ガス25%削減を明言した民主党の鳩山代表=7日午後、東京都内のホテル[共同]

■「期待の国」に転じた日本

 鳩山代表のこの「90年比25%削減」明言によって、地球温暖化問題では、久々に日本が国際社会や市民社会からポジティブな期待をもって迎えられた。直後にスピーチをしたパチャウリ氏やイボ・デブア氏は激賞し、多くの国際ニュースも好感を持って伝えた。12月の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を目前にしたこの時期に日本が意欲的な数字を掲げたことで、これまでリードしてきた欧州連合(EU)、そしてオバマ大統領の米国とともに、日本も国際交渉を前向きに推し進める、大きな原動力へと転じたのだ。

 これまで日本は、気候変動会議で「化石賞」を何度も受賞するなど、カナダやオーストラリアとともに地球温暖化問題に消極的な国と見られていた。筆者も、この春にメルケル独首相と面談した際に、「日本は『懐疑的な国』(Skeptic country)」という言葉を、直接耳にした。

メルケル独首相(右)と会見する安倍晋三首相(当時)=2007年1月[共同]

メルケル独首相(右)と会見する安倍晋三首相(当時)=2007年1月[共同]

 なぜか。旧与党が官僚に国際交渉を「丸投げ・お任せ」してきた結果、国際交渉も官僚主導で行われ、「官僚のイデオロギー」が色濃く出ていたからだ。国際交渉に携わる役所は、外務・経済産業・環境の3省だが、どうしても役所の力関係から経産省イデオロギーが支配的になる。そのため日本の気候変動交渉には、「国際的規範」(Norm)という哲学がなく、「狭い国益」やさらには「省益」や既得権益を代弁する下品なものとなった。ついには他国の首相から『懐疑的な国』と見下げられるようになり、「大きな国益」を失ってきたのだ。

 それを一変させたのは、やはり政治主導だった。「05年基準」という姑息(こそく)な「基準年ずらし」も消えた。岡田克也新外務大臣も、「恥ずかしい目標は全部白紙に戻す」と明言した。ようやく日本でも、まともな感覚と知性を持った政治家が、地球温暖化問題をリードする時代が来たことを実感した。国際社会から期待されているという感覚は、国民にとっても誇らしいものだ。

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