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言葉よりも行動を(篠健司) オーガニックコットンは長期の強力なコミットメントから生まれる(07/10/10)
「オーガニックで行こう。悪いとわかったものを使い続けるわけには行かない」。1994年、米アウトドアブランドのパタゴニアの取締役会で創業者のイヴォン・シュイナードが発した言葉です。この日を境に、全社が一丸となり1996年春までにすべてのコットン製品を、農薬を使用せずに栽培されたオーガニックコットンに転換するという目標に取り組み始めました。 ■環境への影響が大きいコットン栽培 世界の繊維製品の約半分はコットン製です。現在では国内で商業栽培されていない日本でも、多くの人がその肌触りの良さにコットン製品を愛用し、衣料品以外にも様々な製品にコットンが使われています。 多くのコットン製品には「純粋な」「自然な」を意味する「ピュア」あるいは「ナチュラル」という言葉が形容詞としてしばしば使われますが、これらの言葉からは多くの人が「人や環境にやさしい」というイメージを連想するでしょう。日本におけるコットン製品のプロモーションを行っている「日本綿業振興会」のホームページは「信頼のマークCotton USA」について「近代農法とバイオテクノロジーを使用して栽培されたコットンは、質の高い、安心して使えるコットン」と説明しています。
パタゴニアがオーガニックコットンに転換した1990年代中頃には、世界で生産されている殺虫剤の約25%、農薬の10%が、世界の耕地面積のわずか3%弱しか占めていないコットン畑に集中的に散布されているという調査報告も業界団体などから出ています。コットンはコーヒー栽培に次いで最も農薬を使う作物のひとつであることが明らかになったのです。 しかも、散布された農薬の多くは畑だけでなく大気や地下水へと拡散し、人間や自然環境に影響を与えることになります。製品としてのコットンそのものはともかく、地球環境のことを考えれば、「ピュア」や「ナチュラル」という言葉のイメージとはかけ離れているのではないでしょうか。 こうしたコットン栽培による環境へのインパクトを知ったことが、「オーガニック」へとパタゴニア社の経営陣、社員を駆り立てました。 10年近く前になりますが、私もカリフォルニアの内陸部の一大コットン生産地、セントラルヴァレーのコットン畑の視察に行った際にバスから目にした光景を忘れられません。塩田のように真っ白な土地が延々と続いていたのですが、それは適切な灌漑意設備がないために、塩分が浮き出てしまったことが原因だそうです。さらに、灌漑設備の不備は害虫駆除剤や化学肥料などによる土壌汚染を助長するおそれもあると言われています。 この土地は、これらの土壌汚染の結果不毛の土地になった元コットン畑だったのです。コットンは天然繊維として再生可能な素材と言われますが、そこにはまったく持続可能性が見られませんでした。 さて、パタゴニアが100%オーガニックコットンに転換してから11年たった現在、世界全体のコットン生産に占めるオーガニックコットンの割合はいまだに1%未満といわれています。しかし、その生産量は、過去数年、毎年高い成長を見せ、世界のオーガニックコットン製品売上高は2001年の2億4500万ドルから2005年には5億8300万ドルへと2倍以上に成長。2008年には26億ドルへと急成長が見込まれるなど、今後とも高い伸びが予想されていることが、パタゴニアなどのアパレルメーカーや紡績会社、栽培農家などで構成するオーガニックコットンの普及推進団体Organic Exchangeの資料でわかります。 ■ナイキの英断のインパクト
その代表的なブランドであるナイキは、1990年代終わりからオーガニックコットンへの取り組みを始め、2010年までに同社のコットン製品すべてに最低5%のオーガニックコットンを混紡することを目標として公表しています。「5%なんてたいしたことがないじゃないか」と思われるかもしれませんが、百数十億ドルの売り上げを誇るナイキが1年間に使用するコットンの総量を想像してみてください。5%でもその総量はパタゴニアの100%より大きいのではないでしょうか。そして何より大切なのは、この長期のコミットメントです。 なぜなら、一般的な化学製品が原料を製造工程に投入してから完成品になるまで比較的短期間で済むのに対して、コットンは種をまく前の土壌作りから始まり、収穫まで半年近くの歳月と手間がかかる植物なのです。「明日欲しいから、すぐに納品して」というわけにはいかないのです。 しかも、オーガニック認証を得るためには、最低3年間は農薬を使用していない畑で栽培しなくてはならないなど、厳しい基準をクリアすることが求められます。つまり、需要家による長期のコミットメントは、栽培農家の視点でみると将来の需要を予測でき、安心してオーガニック栽培を増やし、また従来農法から転換する強い後ろ盾になるのです。需要が拡大している現在は栽培段階でほとんどのオーガニックコットンの契約購入先が決まっていることも特筆すべきことかもしれません。 ■各業界に求められるコミットメント
一方、日本のアパレルはどうでしょう。ある大手ブランドは製品へのオーガニックコットン導入を検討したようですが、長期のコミットメントを求められ、導入をあきらめたようです。そんななか、日本企業として最も早くオーガニックコットン製品の取り扱いを始めた企業のひとつ「アバンティ」と、フェアトレードとともにオーガニックコットン製品の普及に努める「ピープル・ツリー」の2社が、2010年までにオーガニックコットンの使用を2倍に増やすことを目標に共同キャンペーン「Wear Organic オーガニックを着よう」を9月上旬から始めました。この動きが業界全体に広がることを期待しています。 オーガニックコットンはアパレル業界における環境へのコミットメントを示した一例にすぎません。それぞれの業界、会社が、それぞれが関与する環境課題の根本の原因に目を向け、解決に向けてコミットすることが必要です。 <関連記事> 景気回復でボランティアが足りない?屋久島うみがめ館(07/08/27) [2007年10月10日/Ecolomy] ※ ご意見・ご感想はこちらのリンク先からお送りください。ご氏名やメールアドレスを公表することはありません。 「言葉よりも行動を(篠健司)」最新記事
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