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生物多様性トレンドへの探検(山根一眞)

養老先生も没頭した電子顕微鏡の世界(上)・「虫」をよく見る意味とは(08/02/07)

山根一眞(やまね・かずま)1947年生まれ。獨協大外国語学部卒。ITや環境分野などで取材執筆活動。15回以上訪問したアマゾン体験をきっかけに、野生生物から文明を見直す活動にも力を入れている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、日本生態系協会理事など幅広く活躍

 このページの右にお顔が見える養老孟司先生は、今、電子顕微鏡で生物を見ることの大事さを熱く語っている。これは、大変すばらしいことだ。生物の世界は肉眼で見ても大きな発見がある。よく見ると、私たち人間が高度な工学でしか手にできないと思う造形、機能をちっぽけな虫がとっくに実現していることに気づき「感動」する。

 虫眼鏡や光学顕微鏡で見ると、さらに驚くべき世界を発見して「感服」する。大発見はそこで止まらない。電子顕微鏡で見ると、生命体がもつ、もっと腰を抜かす造形と機能の世界が見えてきて「敬服」する。こうなると、自然の力、というより神様の力の凄さだと思い「崇敬」する。

■生物多様性の危機迫る

 だが、その生命体はひとたび滅びてしまえば二度と取り戻すことはできず、それによってヒトも含めた全生物は遠からず討ち死にする。と口にすると、ちょっと前までは「過激な生物保護派」として白い眼で見られた。ところが、国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はそれが差し迫った事態であることを訴えている。

気温上昇と生態系絶滅の影響

 IPCCの第4次報告書(2007年11月に同パネル総会で受諾)の「第2作業部会報告書」は、人為的な原因(化石燃料の大量使用による二酸化炭素の排出増大)で地球の気温が上昇すれば「生態系の絶滅リスク」が増大すると報告している。1980―1999年の世界平均気温と比べて、わずか1―3度の上昇で最大30%の種が絶滅、3―5度の上昇なら40%以上という地球規模での重大な絶滅のおそれがあるというのだ。

 地球上のあらゆる生物は深い生命連鎖によって生存しているはずで、30―40%の生物が絶滅すればヒトも確実に絶滅する。なぜなら、私たちの生命は「生物」を食べることによってのみ成り立っているのだから。いま私たちが「生物多様性」を考えねばならないのは、そのためだ。

■虫が伝える生物多様性の大切さ

2007年の初夏『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』(日経BP社刊)の対談のため、箱根の通称「バカの壁ハウス」をお訪ねした。左上は私がプレゼントしこの図鑑のきっかけとなった「ミツギリゾウムシのスキャン画像」プリント

 地球温暖化問題の議論において生物多様性を口にする人がきわめて少ないように、「生物学」に関心を持つ人は多くなく、特に若い世代の「理科離れ」は著しい。そこで養老先生の登場となる。生物多様性の大切さを理解するには、若いうちから生物をよく見て感動する、感服する経験が大事なのだ。

 養老先生は虫好きだ。虫、虫と聞くと、これまた「虫なんて・・・」と受け止められてしまうのだが、生命世界を見て感動するには虫が最上の対象なのだ。見れば見るほど、拡大すればするほど、尽きることなく驚くべき世界が見えてくるからだ。モノをよく見るための道具に「虫眼鏡」という名がついたのは、凸レンズで拡大して見るのに絶好の対象が虫だからなのではないかと私は考えている。

 だが、「虫眼鏡」は「光学系」の拡大手段だ。神奈川県箱根町にある養老先生の隠れ研究所、通称「バカの壁ハウス」にも立派な光学実態顕微鏡がいくつかあって、先生はそこで虫の解剖などにも取り組んでいた。だが光学顕微鏡で見えるものには限界がある。それより先は電子顕微鏡の世界だ。

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